変わりたいと思う気持ちと、失いたくない現状

皆さんは、ミヒャエル・エンデ作の「モモ」という児童文学をご存知でしょうか?


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私は、中学生の頃、学校の図書館で見かけた記憶がありましたが、当時は、特に興味が湧かず、手に取ることはありませんでした。

 

しかし、先日、近所の本屋で偶然「モモ」を見つけ、思わず購入してしまいました。

理由は、裏表紙に書かれていた作品紹介に魅かれたからです。

 

”「時間」とは何かを問う、エンデの名作。”

 

社会人になって自由になる時間が減り、時間の大切さが分かった今だからこそ、魅かれたのかもしれません。

 

物語は、モモという少女が、町はずれの円形劇場あとに迷い込むところから、はじまります。モモには両親がおらず、ひとりぼっちでしたが、町の人たちは、そんなモモを放っておけず、寝床をこしらえてあげたり、食べ物を持ちよったりと、とても親切に世話をしていました。

モモと町の人々は、貧しいながらも、幸せに暮らしていたのですが、そこへ時間泥棒があらわれ、人々の暮らしは一変します。

 

時間泥棒に時間を盗まれた人々は、友人たちと会話を楽しんだり、家族とのんびり過ごす時間がなくなってしまい、いかに効率的に仕事をこなすか、いかに時間を節約するかということで、頭がいっぱいになっていきます。経済的には豊かになりますが、気持ちに余裕がなくなり、どんどん人々の心は貧しくなっていきます。 

モモは、そんな町の人々を救うため、時間泥棒と戦い、奪われた時間を取り戻すという物語です。

 

私は作中で印象に残った登場人物が一人いました。それは、主人公のモモと親しいジジという青年で、彼は空想を膨らませ、人々に面白おかしく話すのが楽しみでした。そして、いつか話し手として有名になり、お金持ちになりたいという夢を持っていました。

 

その夢は叶うのですが、あるとき、その成功は自身の実力ではなく、モモと自分を引き離すために、時間泥棒が仕組んだものだと知ってしまいます。時間泥棒は、今の成功を失いたくなければ自分たち(時間泥棒)の邪魔をするのはやめろと脅すのです。

 

ジジは、一度手にしてしまった豊かさを手放す勇気が持てず、時間泥棒と戦うべきだと思う、自分の気持ちに嘘をつき、時間泥棒に気づかないフリをしますが、そうすることで、どんどん心が空っぽになっていきます。

 

私は、現状を変えたいと思いながらも、豊かな生活を手放すことのできないジジを見て、転職する決心がつかずに、ウジウジしていた2年前の自分を思い出しました。

 

私が新卒で入社した会社は、長時間労働は当たり前、上司からは言葉の暴力もあり、入社当初から、転職をしたいと考えていました。

 

しかし一方で、毎日のように上司から怒鳴られ続けるのは、自分が本当に無能だからで、自分はどこへ行っても通用しない人間なのではないだろうかとも、思いました。

毎日怒鳴られたとしても、クビになることはないだろうから、この会社に残れば生活はできる。でも、もし会社を辞めて転職先が見つからなければ、路頭に迷うことになってしまう。

 

社会人になったばかりの頃は、「現状を変えたい」という思いよりも、「今の生活を失いたくない」という思いの方が勝っていました。結局、転職を決意したのは、入社してから4年後の26歳のときでした。きっかけは、親しくしていた同期の女の子が心の病気になってしまい、会社を退職したことでした。私もこの会社にいたら、いずれ心が壊れてしまうと思い、ようやく転職を決意しました。

 

そして、転職後は、以前の会社とは比べ物にならないくらい、居心地の良い会社で働いています。もちろん、仕事なので、しんどいことは、たくさんありますが、それでも、理不尽と思えるようなことは、ほとんどなくなりました。

 

 

…すみません、だいぶ横道にそれてしまったので、話を「モモ」へ戻します。

 

この物語は児童向けのファンタジーで、決して暗いお話しではないのですが、経済的な豊かさを手に入れる代わりに、大切なものを失くしていく町の人々の姿は、過去の自分とも重なり、身につまされる思いでした。